第1章:身」

ー必要悪としてのプレミア、そしてその意義ー


1999年の秋から、2001年の春まで。
その1年半が、僕が「おじゃま館 上新庄店」でバイトをしていた期間です。


知らない人もいるかと思いますので、その勤めていた「おじゃま館」という店について、簡単に説明しておきましょう。
大阪を拠点とし、最近は岐阜にまで進出を果たした、新進気鋭のゲームショップチェーンです。
品揃えとしては中古中心。
元バイトという色眼鏡を外して見ても、その買取金額の高さ&販売の安さは
それこそ日本橋や秋葉原の激戦区に店を構えてたとしても、決してひけを取らないでしょう。

他店に見られない変わった点といえば、レトロゲームの充実ぶり。
昔のユーズドゲームズ(以下ユーゲー)の広告には、「ファミコン在庫1万本以上!」との言葉が踊ってましたが
これは誇張でも何でもなく、実際全店の在庫を集めたら、それぐらいは余裕です。
もちろん、販売にも力が入っており
時にはファミコンの売上が、現行機種のDCやN64ソフトの売上より利益を挙げてたりすることがあるという
まず普通考えられない逆転現象までも起こったりします。

加えて、僕がいた上新庄店(ちなみにここがおじゃま館の本店)では
レトロゲーム専門の通販も行っています。
現在も変わらずやってますので、探し物があるなら使ってみるのも一興かと思いますよ。




さて、そんな幅広い品揃えを誇る「おじゃま館」。
そこで僕が主に担当していた仕事は、「通販の作業」と、「レトロゲームの在庫管理、値段づけ」です。
要はほとんどレトロゲーム専門要員だった、と思ってもらって差し支えないです。
レトロゲームに詳しくないとできない仕事だったので、まさにコレクターだった僕にはうってつけ、
水を得たあげく、勢い的にカッパも川流れさせられそうな魚、という感じでした。


通販作業は、お客さんからの注文受注から在庫確認、梱包、発送までの一連の流れ、
買取で送られてきた品の査定、顧客管理、クレームの対処、
そしてユーゲーに出した広告の製作なんかもやりました。


そしてもう1つの仕事、レトロゲームの在庫管理と値段づけ。
売れ行きを見てソフトの値段を上下させたりとか、店頭のレトロゲームが売れたら補充するとかといった
レトロゲーム販売全般に関わってた、と考えてもらえればいいでしょう。
その結果としてプレミア価格で販売することになったり、逆にセールを敢行したり、
買い取り価格まで変動させたりするわけなのですが・・・。




やたら長い前フリでしたが、第一回目は、そんな値段と在庫の話。

プレミアソフトは何故に高いのか?
どうして安くならないのか?


その事情を、実際に経験した事を交えて書くことにしましょう。






入ってすぐくらいにあった事なんですが、ある時メガドラの「マキシマムカーネイジ」というゲームが買取で帰ってきました。
説明するとこのゲーム、当時は海外版はともかく、日本じゃ発売されたかすらも不明なソフトです。
日本版なんて、誇張抜きに数百本程度しか世に出てないと思われます・・・。
そのレア度たるや、同じメガドラの「コミックスゾーン」や「エイリアンソルジャー」ですら足元にも及ばねぇ、ってレベル。
あえて美術品に例えるなら、ミロのビーナスの左手くらいの激レアっぷりです。


「うおお!こんな激レアソフトを直に見て触れるなんて!凄ぇ!ありがたくて目も潰れかねないさ!!」
なんて事を思いつつ、僕はそのソフトを店頭に並べることになりました。
店員のKさんとの相談の結果、
ついた値段は・・・49800円(税抜き)
・・・分かってます。もうゲームソフトの値段じゃないって程の高さなのは分かってます。
なんせPS2本体とソフト1本買って、まだお釣りがくるくらいですし。




プレミアソフトを見て、「こんな値段で売る気があるのか?」と思ったことのある人もいるかと思いますが
はっきり言いましょう、売るつもりなんてありません。
それでも無茶な値段をつけて、店に並べる必要だってあるのです。



そうした激レアソフトは、いわば”客寄せパンダ”なのです。
他所で滅多に見ないような激レアソフトがある店と、それは無いけど他は同じような品揃えの店。
どっちの方が、目当てのソフトがある確率が高いと思えますか?
当然、イメージ的には前者でしょう。

「あそこにはあんな激レアソフトまであるんだから、きっと別の目当てのソフトだってあるに違いない」
そんな風に”品揃えがいい”ってイメージがつけば、
意外と狭いレトロゲームコレクターの輪の中の事。口コミで探し物のあるお客さんも増えていくという寸法です。


そんな事情があるから、激レアソフトは売るつもりが無いどころか、むしろ売れてくれては困るくらいなのです。
そういうソフトがまた買取で帰ってくることなんて、滅多に無いですし。




そんな理由で、もはやゲームソフトの域を超えたような値段で並べられた「マキシマムカーネイジ」。
しかし・・・恐るべき事態は、その十数分後に起こりました。
並べ終わって「うん、いい感じの品揃えになってきた」なんて浮かれながら、別の仕事をしていたのですが
その時店員のKさんから連絡が。

「さっき並べたマキシマムカーネイジやけど、通販の常連さんが買うってさー。
 なんつーかタイミングええよなぁ。そういうわけで発送しといて。」





「マキシマムマーネイジ」お買い上げ。




十数分で。




49800円なのに。





・・・梱包しながら、何かもの凄くやるせない気持ちになったり
「お金ってのは、天下の回りものじゃなかったのかよ・・・!?」と思ったり
「こんなのポンと買う人がいるってのに、日本はどこが不況なんだよぉ!!」と、この国のシステムに疑問を投げかけたりしてた僕を
一体誰が責められるというのでしょう?

こんな常識外れの値段でも、1日ともたずに売れてしまうのですから
次に同じソフトが入ってきたときには、さらに買う気を失せさせるような無茶値段をつけざるを得ないのは、必然というものです。
もし今度帰ってきたら、69800円くらいにしようと心に誓いましたともさ、ええ。




まぁこれは極端な例ですが、こんな風に無茶苦茶高い値段だとしても
買う人がいるからこそ値段は上がるわけです。
考えてみれば、至極当たり前な結論ですけど。

店側も商売ですので、そんな前例があるのに値段を前と同じにしたり、ましてや下げるなんて事はするはずありません。
もちろん買う人が悪い、って言いたいわけでもありません。
そうしなければ手に入らない程に入手が難しいソフトというのは確実に存在しますし、
確かに探せば安く見つかるソフトもあるけど、誰もがそうして探すヒマを持ち合わせてるわけじゃないです。
探す手間を省いて高値で買ったとしても、それを誰も責めることなんてできないでしょう。


普段から「高い」って言われてるプレミアソフトですけど、
その裏には店の事情や、過去の販売経歴が入り混じっているのです。
決して高値で売りたい為に値段設定してるとは限らないってことは知っておいてほしいと思います。
賢い買い物する為にも。




もっとも、そんな事情が存在してるとはいえ、高いのは事実。
これだけでは「品数はあるけど高い」と認識されるのは仕方がないことです。
それを防ぐ為に別の策を用意したりするのですが・・・。
ま、詳しくはまた次回以降に。






・・・と、こんな感じで販売側に回って気づいた事実とか、今じゃ笑い話になるような事件、
そんなのを書き記しておこう、ってのがこのコンテンツの趣旨です。
「ああ、レトロゲーム販売の裏ってこんな感じなのね」と知ってもらえれば・・・
って程度のユルい趣旨でやってきますので、しばしお付き合いの程を。


戻る